interview

第六弾

高野さん×門倉さん×堀さん

インタビュー企画 第6弾!

コンテンポラリーダンス『「影」』振付の高野萌さん(以下:高)、コンテンポラリージャズダンス『4000粒の恋の唄』振付の門倉悠さん(以下:門)と『roots』振付の堀由衣菜さん(以下:堀)にお話をお伺いしました。

 

Q.振付したジャンルを選んだ理由は?

 

高:大学に入って初めて参加したのがコンテンポラリーダンスだったから、その作品を創りたいと思いました。

 

門:僕が踊りと出会ったのは神崎先生の作品でした。それがきっかけでダンスを始めたので、卒業プロジェクトでもコンテンポラリージャズで作品を創りたいと思いました。

 

堀:私もコンテンポラリーとコンテンポラリージャズの違いはそんなに無いと思っています。門倉と一緒で、神崎先生の創る作品に惹かれてゼミに入ったんです。

 

Q.作品にかける思いなどをお聞かせください。

 

高:私はダンスを知らないお客様が観ても分かりやすくて面白いと思えるダンスを創りたかったんです。だからダンサーも共感できるストーリー性のあるものが分かりやすいかな、と考えて、自分の葛藤や悩みを思い出しながら、もう一人の自分=分身という物語を通して『「影」』を創りました。

 

門:僕の想いをそのまま作品にするとお客さまを暗い気持ちにさせてしまうから愉快な作品にしたかった。どんなに良い作品も頭だけで考え始めたら感じることができなくなるから。もともと映画みたいな感覚で創りたかったんです。お客様には音と踊りのバランスとかを楽しんでもらいたい。チャップリンの「人生は近くで見れば悲劇。遠くで見れば喜劇。」という言葉にとても共感しました。知り合いは僕の作品をとてもダークだって言うんですけど、僕が大学に入って出会ってきたものは全て奇跡だと思っているんです。でもそれがずっと続く訳じゃない。その儚さと、それを乗り越えてちょっとずつ強くなっていく姿が少しでも伝われば、と思います。

 

堀:『roots』は、これまでの自分の歩みを卒業プロジェクトで振り返りたいと思って創り始めました。就職活動中に自分の進む道が合っているのか分からなくなった時期に、たまたま実家のある福井県に帰ったんです。乗っていた電車がトンネルを抜けたら、一面緑の田んぼでした。それを見た瞬間にこれまで悩んできたことも、それ自体が正しかったんだと感じたんです。そこで自分は卒業したらもう踊る道には進まないけれど、この4年間で学んだことを出会った人たちに何かの形で届けたいと考え、『roots』が出来ました。ある時、大学でずっと一緒に踊ってきた友達が、ダンサーになる夢のために大学を辞めることになりました。私はその子に「お互い別々の道に進むけど、いつかその道が繋がって、同じ舞台で踊れたらいいね。いってらっしゃい」と言って送り出しました。そのシーンを最後のふたりのデュオとして描いています。『roots』ポイントはあの上空の球(たま)ですが、それぞれにはこれまでの人生の思い出が詰まっているんです。ひとは時に自分が分からなくなって自身を傷つけたり、反対に「大丈夫だよ」と自分で自分の背中を押したりします。球にはそんな色々なそれぞれの自分への思いが詰まっています。ずっと上から見守ってくれている存在なんです。ダンサーにもそれぞれのルーツをイメージして、装置さんと一緒にデザインを考えてもらいました。

 

Q.稽古場はどんな雰囲気でしたか?

 

高:私は作品を最初から順番に創るのではなく、いろんなシーンを別々に作って最後に繋げる方法でした。だからダンサーの中でも「これは一体何のシーンだろう?」とか「この振りは結局どういうことになるんだろう?」と戸惑っていたはずです。でも真面目な人が多く、それぞれが自分なりに真剣に作品に向き合ってくれた。全体像が見えない中で、みんなが必死に作品を創ろうとしてくれていました。自分自身もダンサーとして出てる身なので、その姿にかえって刺激をもらいました。

 

門:僕の稽古場はとにかく楽しい感じかな。男性だけだから男性っぽいノリ。

 

堀:どんな感じなんだろう女子には想像がつかない。

 

門:ピリピリしたものはなくて、先輩後輩の関係もなく言い合って、互いに溜め込まないことを意識して稽古していた。「こういうのやったら面白そうじゃない?」というふとした意見も全て取り入れて振りにするとか、この7人でしか創れない作品にしようと稽古を進めてきました。

 

 

 

 堀:『roots』はとにかく家族みたいな感じ。誰か一人が欠けても絶対にこの作品は出来ない、という気持ちがとても強いメンバーです。私だけがクラシックバレエの出身だから、私の作品はバレエのような動きがほとんどなんです。経験者が全然いないので、かえって全員が分かるまで、出来るまでやりたいという意志がすごく強かったと思います。これから先、いつでも帰ってこられる温かい場所、つまり自分のルーツだと誇れる雰囲気がある。

 

Q.最後に出演しているダンサーへのメッセージを。

 

高:『「影」』を創ってくれてありがとう。そして本番直前だから、あとは怪我に気をつけて最後まで頑張ってくださいと言いたいです。

 

門:まず僕を7人で支えてくれてありがとうございます。あとは僕らの想いをお客様の前で、それぞれが自分らしく表現してほしいです。

 

堀:ここまで確実に成長してるからこそ、舞台に乗ったらもう立派な表現者。だから全てを託します。私の想いをダンサーとしてしっかり届けてほしい。PBをお客様に心から「観に来てよかったな」と思っていただける時間にしてほしいです。

 

 

—ありがとうございました!

 

 

第五弾

齋藤瑞穂さん×宮脇真耶さん×大城若菜さん

インタビュー企画 第5弾!

コンテンポラリージャズダンス「Gola Gola」振付の齋藤瑞穂さん(以下:齋)と「滕王閣」振付の宮脇真耶さん(以下:宮)、そしてコンテンポラリーダンス「クラクラCRUSH!!!」振付の大城若菜さん(以下:大)にお話をお伺いしました。

 

Q.それぞれなぜこのジャンルを選んだのか、そしてそれに対する想いがあれば教えてください。

 

齋:インド映画がすごく好きなんです。展開はハチャメチャで、何も考えずに観られるから、観てる人はみんな楽しい。それってダンスの原点なんじゃないかな、と思ったんです。もともとジャズダンスが好きで、絶対コンテンポラリージャズのゼミに入ろうと思っていました。その中で、私の考えるダンスの原点みんなが楽しむ事が出来る、楽しいから踊るっていうのを、4年間の集大成として舞台に描きたくて、インドの舞踊を取り入れたポリュートのダンスや、インド映画に出てくるダンスを取り入れた作品を創りました。

 

大:演劇公演を履修している時に、言葉なしで身体表現することはどこまで可能なのかということに関心が生まれました。身体表現ってどこまで広がっている世界なのか覗いてみたくなったんです。それでコンテンポラリーなら何でも出来そうだったので、コンテンポラリーのゼミでこの作品を創りました。

 

 

 

宮:私は1年生の時から舞踊公演に関わってきました。コンテンポラリーは型にはまったダンスではないから、身体だけでどんなことまで表現できるのか、言葉を使わないで表現できるものに挑戦したくて、コンテンポラリージャズのゼミにしました。

 

Q.どんな思いで作られているのか、作品にかける思いなど、教えてください。

 

宮:大学で中国文化研究の授業がすごく楽しくて。中国は隣の国だけど知らないことがたくさんあり、調べれば調べるほど深く綺麗な文化が見えてきました。だからその綺麗さを魅せたいと思いました。その一方で、中国には現在メディアで取り上げられるような複雑な事情もあります。この公演は4年間学んできたことを発表する場だから、その複雑さを言葉ではなく身体だけで表現しようと考えました。

 

 

 

 

大:この作品を創ろうと思ったのは、自分のネガティブな経験が基になっているんです。その経験をどうやったら楽しかった記憶として忘れることができるか考えた。私ゾンビが好きで、私の作品に出てくるゾンビに自分を重ねて「ネガティブな気持ちだった自分もハートが生き生きしてなかった。何かがきっかけでハートが生き生きして、今の自分になってるんだ」と思ったので、このゾンビたちにもハートが生き生きするきっかけを与えて、最後はポジティブに仕上げようと、恋をテーマに創りました。ダンサーたちには恥を捨てて思いっきり楽しくはじけてほしいと思います。 

 

齋:私の作品は大人数なので、ダンス未経験だけど挑戦したいって子が多いから、その子達に「踊りって楽しいんだよ。だけど舞台に立つことってすごく責任があるんだよ」ということを知って欲しかった。だからそれを稽古の前提としてこの作品を創りました。この作品に出てくれた子が少しでも踊りに対して積極的になって、外部の舞台に挑戦したり、来年も履修しようと思ってくれたら報われます。

 

 

Q.稽古場の雰囲気作りを工夫していますか。

 

齋:未経験の子たちが分からないことがないように、タイムスケジュールをしっかり組んで、毎回何をするのか分かるようにした上で、稽古を進めました。本番までの期間が短いことも知ってほしいから、カレンダーに「あと何回」「この日は何回目の稽古」「ここまでに振りをあげたい」と書き入れながら、みんなが協力体制に入れるようにしてきたつもりです。時には厳しいことも言いましたが、一方で気持ちが折れないようにフォローしました。私はみんながこの作品を踊りたいと思ってくれるような流れを作る。みんなはそれに付いてきてくれる。稽古自体はすごくスムーズだったと思います。雰囲気よく本番を迎えられるのは19人のダンサー全員のおかげです。

 

大:稽古の雰囲気は、終始にこやかな感じで、時には笑が止まらないこともありました。全体的にみんなでワイワイ創れて楽しかったです。2年生は挑戦する気持ちで、3年生は4年生の気持ちを汲み取って、4年生は作品を客観的に観て、それぞれが自分の役割や立場を理解して動いてくれることも多かったので、そのおかげで楽しく稽古場が回ったのかなと思っています。 

 

宮:私は稽古しながら創っていったので私から提案することが多かったと思います。踊りだけではなく、資料を共有したり、中国の民話で配役を考えてみたり、色々実験を重ねたんだけど、本当にギリギリまで試行錯誤しました。でもみんな真剣に取り組んでくれる雰囲気と何にでも対応できるスキルに私はすごく助けられました。楽しく話してるけどワイワイって感じじゃなくて、切り替えが素早いメンバーです。

 

Q.今も少しお話し下さいましたが、最後に出演しているダンサーへのメッセージをお願いします。

 

齋:私の作品に出てくれて本当にありがとうと言いたいです。このメンバーだからこそ出来た作品だし、最後まで私も頑張ってこられました。みんなもそう思ってくれてたら、嬉しいです。今後につながる何かが、残せてたらいいなって思います。

 

大:すぐ考え混んだり、煮詰まったりしてしまうマイペースな私ですが、みんながイメージを積極的に体現してくれました。至らないところが多かった私に文句一つも言わずに、頑張ってついてきてくれたみんなには感謝します。ダンサーのみんなが「やりきった!すっごく楽しかった!」とPBを終えてくれれば嬉しいです。そうすれば私たちの想いもお客様にきっと伝わると思います。

 

宮:私あんまり口に出して言わないけど、みんなで創れたことがすごく嬉しくて、(齋藤を見ながら)出演者がいるからすごい恥ずかしいんだけど(笑)、本当に感謝してます。そしてこれを機にみんなもお客様も中国的な美しさにハマってくれると私は嬉しい。

 

 

—ありがとうございました!

第四弾

伊東美優香さん×宗田真依さん

インタビュー企画 第4弾!

コンテンポラリージャズダンス「海に行く」振付の伊東美優香さん(以下:伊)と、「informo」振付の宗田真依さん(以下:宗)にお話をお伺いしました。

 

 

 

Q.なぜコンテンポラリージャズを選んだのか、教えてください。

 

伊:私はコンテンポラリーをすごくやりたかったのと、神崎先生の教え方や踊り方11つが的確でゼミに入る前から授業を受けたり、先生の作品を観たりして絶対神崎ゼミに入ろうと思って、入りました。

 

宗:ストリートダンスもやっていたので、私にとってコンテンポラリーは難しいけど、神崎先生の授業は常に「イエス アンド…」だから自分がやることを否定されないんです。選んだのは自然なことでした。

 

 

Q作品にかける想いなど、教えていただけますか?

 

伊:私の作品は自伝的だけど、7人のダンサーからもインスピレーションを受けている。だからこのメンバーじゃなかったらできていないんです。演劇がやりたくて大学に入ってきたんですけど、いろいろ経験して今踊る方に戻ってきた。この作品は、「全部、自分の大切なものでも、すべてを取っておいたら、本当に大切なものが埋もれてしまうんだよ」ということを表しています。

 

宗:個人的に疑問だったんだけど、それと海の関係性はどうなっているの?

 

伊:今年の夏は自分で色々詰め込みすぎて、全てが中途半端なんじゃないかと悩んでいました。そこでふと夜の海に行ったんですよ。私、海は泳げないからもともと好きじゃなかったんです。見るだけなら嫌いじゃないけど。そうしたら一瞬で重荷がさーっと全部取れた気がしたんです。いろんなものが取り払われて、もう一回考え直す時間が出来ました。本当に大切なものだけを大事にしていこうという思いを、作品に込めたい。創作中にその気持ちはどんどん強くなりました。

 

宗:私はしゃべるのが苦手で、本当に人見知りでした。バレエを習ってたけどずっとそれだけで来ちゃって、自分を出すタイミングがなかった。それはおばけみたいなもので私の人生にずっと影響しているんです。そんな伝えたいけど伝えられないおばけたちを描いてみました。昔の経験や大学生活で出会ったもの、特にこの夏出逢ったものが詰め込んであります。スタッフにもいろんなわがままを聞いてもらいました。そうして出来た世界にお客さまを巻き込みたい。

 

ー最初に拝見した時は、かなりコミカルな作品だったので意外でした。

 

宗:私の中では意外性はあまりないんだけど、今回は「ああいう作品創るんですね。」とよく言われます。自分でもこんなにコミカルな要素を入れるつもりではなかったんですよ。ダンサーの意見やアイデアをもらいながら創っていくから生まれた。それが楽しい。

 

Q.少しお話に出てきましたが、稽古場の雰囲気作りはどのようにされていますか。

 

伊:私が関わっている作品が原山佳菜の作品(『時間』)と高野萌の作品(『「影」』)なんだけど どちらも稽古前のウォーミングアップからみんなで盛り上がっていたんですが、私の作品はすごく「シーン」としていて「大丈夫か?」という感じでした(笑)今まで、4年生以外の子とはあまり関わりがなかったので、みんな真面目に私の言うことをよく聞いてくれる。すごくいいことなんですけど、上下関係になってしまっていないか心配でした。ようやく最近は打ち解けてきて、どんどん喋るようになったので、とても安心しました。今はすごく良い雰囲気です。みんな本当に万能ですね。私のやりたいことは実現できるのか心配で、時間がかかるかなと思っていたんですが、あっという間に出来ちゃって。どんどん新しいことに挑戦できます。みんなのキャラクターが違っていて、それが良い感じに作品に出ていると思います。

 

宗:私の作品の出演者は2、3年生だけなんですけど、2年生とはこれまでほとんど関わったことがありませんでした。だから最初から楽しく、2年生と3年生が学年の垣根なく居られるようにやりたくて、体幹のトレーニングをしながら「しりとり」したり、美しいポーズで立ち止まるためにテーマを設けて「だるまさんが転んだ」をしてみたりしました。最近は、2年生が3年生に質問しに行ってるのが見えてすごく嬉しい。

 

伊:私も本当にそう思う。稽古していても、休んだ子には私の知らない間に誰かが教えてくれててくれる。そういう事のおかげで本当に助かってます。

 

Q.最後に、出演しているダンサーへのメッセージを。

 

伊:みんなに会えてなかったらこの作品はなかった。「物」を表現している5人は、最初は無機質な感じで行こうと思ってたんです。でもその5人がすごく個性的で、「その個性絶対生かしたい」と思いなおしました。それがすごく良い方向に行ったのでみんなに感謝してる。「大切な物」の2人にも。みんなを信頼しているので、みんなの気持ちをそのまま表現してくれたら嬉しい。このまま最後までみんなで頑張りましょう。

 

宗:私の作品も、みんなの個性と技術にとても助けられて成り立っているから、本当に感謝しています。でも本番で踊れるのはわずかに3回。

 

伊:うん。だからこそ失敗を恐れずに入り込んで、本番に臨んでほしいと思います。突き抜けて、悔いなく踊ってほしいです。私も頑張る。 

 

宗:そうだね。最後まで一緒に頑張ろう。

 

 

—ありがとうございました。

第三弾

原山佳菜さん×本郷千洋さん

インタビュー企画 第3弾!

コンテンポラリージャズダンス『時間』の原山佳菜さん(以下:原)と、『日々の泡』の本郷千洋さん(以下:本)に伺います。

 

 

Q.振付したジャンルへを選んだ理由は?

 

原:私がコンテンポラリージャズを選んだのは、まずゼミの神崎先生のジャズテクニックに魅了され、自分に必要なものを自覚できたからです。そしてコンテンポラリーというジャンルは、自分がかきたてられたイマジネーションをストレートに出せるのが、とても魅力的だと感じたからです。

 

本:私は今自分の中にあるものや経験してきたものを自由に出したくて。 “コンテンポラリージャズ “コンテンポラリーダンス“というくくりにこだわっているわけではないのですが、神崎先生の下で学びたい一心でコンテンポラリージャズダンスを選びました。

 

Q.作品にかける想いなど、教えていただけますか?

 

原:私はみんなにも一つ一つの時間を大切に過ごしてほしいなと思い、「時間」というテーマを基に創作しました。

 

本:原山自身もすごく時間には厳しいよね。集合の1時間前には着いていたりするし、連絡してもすぐ返事返ってくるし。

 

原:せっかちって訳じゃなくて不安だから、早いだけです(笑)。

 

本:私たちはみんな普段から互いにぶつかったりして影響し合っている。でもいつ人間はいなくなっちゃうかわからないわけだから、生まれてきた喜びとともに、今をもっともっと大切に頑張らなきゃいけないという想いで、創りました。

 

原:本郷は穏やかであったかい人柄だから、作品にもそれがにじみ出てる。『日々の泡』ということで、ちょっと儚い、どこか切ないようなところが私はすごく好きですね本郷とは春学期に2人で1つの作品を共作していました。今回もまた共作するのか話し合った結果、『時間』と『日々の泡』に分かれて創作したんだけど、今を大事にしたいというところは共通しているなと思うので、互いに知恵を出し合ったりしてます。

 

本:良い相談相手です。

 

 

 

Q.稽古の雰囲気はどんな感じですか?

 

原:私の作品に出ているダンサーは8名。2年から4年まで揃っていて(注:1年生はスタッフで参加)みんな非常に仲がいいんですけど「やるときはやる」というスイッチを持っている子達が集まっているので、メリハリのある稽古ができています。熱心に取り組んでくれるからこそ厳しい意見も出してくれるので支えられています。

 

本:うちは穏やかな稽古場かな。みんな性格が似ているというか、すごくまったりしてるタイプの人達。こうしてほしいと言うと、すぐに理解してくれる。喧嘩は絶対起きない雰囲気ですね。

 

Q.最後に、出演しているダンサーへのメッセージを。

 

原:作品が『時間』だから、ある瞬間、その場所でしか起こらないことを大切に、でも最後まで諦めずに粘り強く自分と向き合って、ありのままの自分を表現してくれたら嬉しいです。

 

本:すべての作品のメンバーに言えることだけれど、頭の先から足の先まで、今ある身体、そして心も全部大事なものだから、全身全霊で作品に立ち向かって欲しいと思います。ダンスに関しても、今後の自分のあり方に関しても。私も頑張ります!

 

 

ーありがとうございました!

第二弾

林安奈さん×佐々木桃子さん

インタビュー企画 第二弾!

コンテンポラリーダンス『pick"N"choose』振付の林安奈さん(以下:林)と、創作民俗舞踊『天地』振付の佐々木桃子さん(以下:佐)の登場です。

 

Q.振付したジャンルを選んだ理由は?

 

林:青山円形劇場(注:昨年1月に閉館)で開催していたPAF2014(注:『Performing Arts Fair 2014』の略)で、楠原竜也先生振付の『Pin-Gr-W』という作品に出演した時に初めてコンテンポラリーダンスに触れたんです。3年の時は日本舞踊のゼミでしたが、今回初心に帰って踊りを創りたいと思い、コンテンポラリーダンスにしました。

 

佐:私は安奈とは逆で、3年の時はコンテンポラリージャズダンスのゼミでしたが、4年では民俗舞踊のゼミにしようと決めていました。コンテンポラリーは自分の好きな振付で創れるけど、民俗舞踊や日本舞踊には決まった所作や様式があって、それを学べるのは大学にいる「今だけだ」と考えたんです。

 私は宮崎県出身で、ずっと「地元を出たい」と思ってたんです。でも東京に来て、地元の大切さや自分の郷土愛に気づきました。改めて宮崎のことをもっと知りたくて、演目も地元のものを選びました。

 

林:私は中学から高校までずっと絵を勉強してたんです。でも絵画だけに止まらず、ダンスや演劇、いろんな表現方法が学べるこの大学に入ったんです。今まで絵だけで表現してきた自分の世界を、大学で学んだ表現方法を使って、実際の空間や場所で、人間の身体を媒体として表現することにチャレンジしたい。4年間を集大成する卒業プロジェクトで、自分がこれまで吸収してきた表現方法をいっぱい詰めて作品を創りたい。それならコンテンポラリーダンスだ、と思いました。一般的に振付とは、まず踊り(動き)をイメージしたり、曲にどう合わせるかを考えたりして創るけれど、私は舞台を絵の具をのせたパレットに見立てて、絵を描く感覚で作品を創っています。

 

佐:そうなんだ。これから見方が変わるね。安奈の作品。

 

林:うん。これは絵を描くことが好きで、ずっと続けてきた強みだと思う。そこに踊りで学んだことも加わって、人とは違った感じで作品づくりが出来ているのかも。

 

 

Q.作品創作や作品にかける思いなど教えてください。

 

佐:話が重なりますが、一番大きいのは、生まれ育った故郷、大好きな家族がいる地元の宮崎への感謝の気持ちです。もう1つは作品の中に、闇に光が戻って村人が全員で一斉に踊るところがあるんです。このシーンは、心の平穏や幸せを表しています。これは今の世界や自分の状況が、こうなってほしいという願いにリンクしてます。

 

林:私も桃子と結構近いかもしれない。作品を創るにあたっては、まず自分が最もはじめに感謝すべきなのは両親だと思った。両親がいてくれたからこそ、自分が生まれてからこれまで過ごしてきた時間がある。だから大学で学んだことの集大成を親に観てもらう事で感謝を伝えたいです。

 

佐:一緒だよ!感謝を形にしようとしたら、こういう作品になりました!ってことなんだよね。

 

林:そう。でもお客さまに「自分の感謝」という私的な想いを押し付けるわけにはいかない。だからお客さまには私の学んできた表現方法を純粋に楽しんでもらえるように努力したいです。

 

 

Q.稽古の雰囲気はどのような感じですか?

 

林:4年生が私だけで2年生と3年生ばかりの稽古場なのでとてもフレッシュです。だから自由にできる稽古場だと思うし、みんなが自分の意見を言いやすい雰囲気です。私が「何か意見のある人、手挙げて~!」って言うと一斉に「はい!」って。

 

佐:それ大事だよね。『天地』はキャスティングで、素朴な魅力を感じる人たちを選びました。だから稽古でも自然体でいてほしい。その人自身をできるだけ出して欲しいので、作品のストーリーとシチュエーションだけを決めて、のびのび表現出来る環境づくりを心がけてます。例えば「天照が隠れて暗闇になったら暗い。それは苦しいし悲しいよね。それを自分なりに表現してみて!」というふうに。みんなダンサーとして履修しているから、踊りの技術だけでなく個性や人間性も、この『天地』を通して磨いて欲しいと思っています。

 

Q,最後に、出演しているダンサーへのメッセージを。

 

林:ダンサーたちには、まず私が描いている世界を体現してくれてありがとうって言いたい!

すごく抽象的な作品だから困惑させてしまったかもしれないけれど、最後にはそれぞれが自分のものにしてほしい。そしてお客さまを巻き込んでみんなの『pickNchoose』ワールドを創り上げたいと思っています。

 

佐:やっぱり一言で言えば、「ありがとう」。作品中インプロヴィゼーション(注:「即興」の意)のシーンもあるんだけど、誰も経験したことがない。だからなかなかうまくは出来ないんです。でもみんなが自分なりに考えてくれて、自分なりの色をつけてくれている。私が渡した振りだったり、シチュエーションだったりを、自分たちの色で染めてくれる。そのことに本当に感謝しているんです。

 

林:これは青山(典靖)先生がかけてくださった言葉なんだけど、「紙があっても絵の具がなきゃ色は付かないし、安奈だけでは絵を描けないよね。自分が真っ白なパレットでその上にダンサーたちが色を乗せてくれるから、一つの作品として存在出来るんだよね。人に観せられるんだよね。」って。本当にその通りだと思う。作品も愛おしいけど、ダンサーのみんなもすごく愛おしいんです。

 

ーありがとうございました。

 

 

大きな愛とたくさんの感謝の気持ちが溢れ出ているお二人の話は、お聞きしているこちらまで自然と笑顔になりました。異なるジャンルにも関わらず、「愛」と「感謝」で作られた二つの世界。その中でダンサーがどのように生き、お客さまの前でどのように表現されるのか。本番が楽しみです。

 

みなさまもお見逃しなく!

第一弾

柴田京さん×幸田那由多さん

インタビュー企画 第一弾!

今回は日本舞踊の「連獅子」を振付した柴田京さん(以下:柴)と創作民俗舞踊の「仙台すずめ踊り」を振付した幸田那由多さん(以下:幸)に聞きました。

Q.振付したジャンルを選んだ理由は?

 

幸:それまでジャズダンスやクラシックバレエしかやってこなかったのに、大学に入る前に『アメリカ桜祭り』の公演を観て「創作民俗舞踊」に惹かれました。入学して先輩に聞いたらそこで踊っていたのは日本舞踊どころか、舞台で踊ったこともない人もいたことを知ったんです。色々なジャンルの授業を受けてみて、改めて「創作民俗舞踊のゼミに入りたい!」と思いこのゼミにしました。

 

柴:私は小さいころからずっと日本舞踊をやっていて、クラシックバレエやモダンダンス、ジャズダンスは少しかじった程度だったんです。日本舞踊は大学に入るまで知らない子の方が多い。だからこそみんなに知ってほしいといつも思っていました。そんな時に『アメリカ桜祭り』を観て、日本舞踊とはまた違うパワフルさに衝撃を受けました。しかもアメリカでやっていると聞いて、ここに入るしかない、と一目惚れでした。一方で他にも色々なジャンルを勉強できるというのも入学した理由の1つです。色々学んだ末に舞踊のゼミを決めました。

 

 Q.作品創作や作品にかける想いなど教えてください。

 

幸:今回の作品は私にとって4年間の集大成です。私と同じようにこれまでクラシックバレエやジャズダンスしかやってこなかった後輩たちにも、民俗舞踊というのがあって、「こんなに楽しいんだよ!」というのを知って欲しいと思っています。もちろんお客さまにも一緒に味わってもらいたいですね。

 

柴:日本舞踊には多くの流派があって、東京で出会った小山先生も青山先生も花柳流という流派の方々です。私が小さいことから属している愛知県の石川流では、「連獅子」は名取と師範という免許がないと踊れません。私は大学入学と時期が重なって、名取と師範の免許を取らずに東京に来たので踊れなかったんです。でも「連獅子」というダイナミックな作品は大好きで、自分の流派のお姉さんや先生が踊ってるのを観て憧れていました。それを小山先生に相談したら「PBなら自分は踊れないけど、自分の作品として流派関係なく創ることが出来るよ。」と言って頂きました。民俗舞踊とも迷いましたが、大学での4年間だけでなく、これまでの自分の舞踊人生の集大成としてスタジオで披露できるのなら創るしかない!という強い思いから「連獅子」を選びました。

 

 

Q.練習の雰囲気はどのような感じですか?

 

 

 

柴:私は教えてもらう側だけど、那由多の作る「やるときは、やる」雰囲気がすごい好き! 那由多の作品だなって感じ。

 

幸:良かった。どう思っているか気になっていた(笑)。

 

柴:私はひとの作品だと色々言えるけど、いざ自分の作品になると固定概念が消えなくて、殻が壊せない。普段はテンション高い方なんだけど、稽古の最初の方はすごく悩んでて、毎回静かな稽古場だったと思う。でも出演してくれる目方(潤)と義煎(怜央実)も私の指示を待ってくれるんだよね。途中で悩んでるのを分かったんだろうね。レオ(義煎)は「日本舞踊の振りでこういうのがあるんですけどどうですか。」とかアドバイスをくれました。潤くん(目方)も「アクロバットできますけどやってみません?」とか。私も「連獅子でアクロバットって面白い!」と感じて、途中から本当に良い雰囲気の創作の場だった。私はイメージに近い動画を観せたり、2人からはそれに対する提案とか、どうしたら2人が舞台映えするかとか、動いてもらって決めています。出来上がったものを並べてくっつけるんじゃなくて、バーっと散らばったピースを、拾ってる感じです。2人がどう思ってるか知らないけど、私はすごく助かってる。11で、しかも親獅子と子獅子だから、こうしたらガキっぽいとか、こうしたらちょっと頑固おやじっぽいというのもお互いが言える。何でも言い合えてやりやすいのは多分『アメリカ桜祭り』を一緒に行ってるからだと思います。

 

Q.最後に出演しているダンサーへのメッセージを。

 

幸:特設サイトでも書いてるんだけど、自分が感覚で踊るほうだから、人に言葉で伝えるってことに苦戦しました。でもそれをダンサーが理解してくれたからこそ、作品として今成り立っています。本当に感謝しています。すずめ踊りはみんなに託したから、あとは楽しんで踊って欲しいと思ってます。

 

柴:ありがとう、楽しむ()

今回の「連獅子」の稽古を通して、私の弱いところや見せたくなかったところも全部さらけ出せたと思います。私も出演してくれる2人には感謝しかない。私は4年生だからこれで卒業だけど、彼らは3年生だからまだ1年以上ある。

「連獅子」って、獅子が子供を全員谷に落として、そこから這い上がってきた強い子獅子だけを育てるという伝説を基にしているんです。親獅子は、谷に落とされても頑張って這い上がろうとする子供をずうっと見守っている。人生でも同じように自分が上にめがけて頑張っているのを絶対に見守ってくれている人がいるから、秘めた可能性を生かすように、頑張って這い上がって、まだまだ上を目指してほしいと思います。OGOBになって公演を観に来た私たちを驚かせて欲しい!

 

幸:そんな先の話しちゃうの()

 

柴: 2人しかいないからすごく肩入れしちゃうんだよね!成長する時間はまだまだあるから、無駄にせず頑張ってくれたらいいなって本当に思う。この作品を糧にして成長してくれたらお母さん嬉しいです()

 

ー素敵なお話ありがとうございました。公演楽しみにしています。

 

終始楽しい雰囲気で、熱い想いをたくさん語ってくれたお二人。

日本舞踊と創作民俗舞踊、形式の全く違う、日本の伝統ある 踊りをぜひお楽しみに!